熱と圧力を加えて、金物などの物質をほかのものと一体化させることを溶接と言います。
溶接は、大きく分けると融接・圧接・ろう接に分けることができます。しかしこれは大きな分類であり、さらに細かく分類するとさまざまな方法が多くあります。
溶接の中でも、アーク溶接は広く使われている方法です。
アークと呼ばれるイオン化された媒体から発せられる放電を、金物の材料と電極の間に生じさせることで起きる熱を利用して接合部を溶かし、溶接します。
では、金物などに使われる溶接には、ほかにどのような種類や方法があるのでしょうか。
今回は、さまざまな溶接についてお話ししたいと思います。
溶接の種類
溶接には、融接・圧接・ろう接という種類があることは先述しました。しかし、これは大きく分けたときの種類であり、融接・圧接・ろう接をさらにさらに細分化すると、溶接には60種類以上が存在すると言われています。
用いられる方法は、溶接する素材や状態によって選ばれることがほとんどです。また、溶接を行う現場によって変えられることもあります。
融接
融接とは、母材同士を熱や圧などで溶融して接合する方法です。
融接には種類があり、アーク溶接、電子ビーム溶接、レーザー溶接、プラズマアーク溶接などが代表的な方法です。
中でもアーク溶接は、金物を接合したり、工事現場などで用いられることが多い融接で、放電に伴う熱を利用することが特徴です。
コンセントから引き抜こうとしたとき、プラグから光を見たことがある人は多いのではないしょうか。
これは、気体に熱が放電されたことで起きています。アーク溶接は、この「アーク放電」と呼ばれる放電によって生じた熱を使った溶接なのです。アークが放つ高熱が溶加材を溶かし、融合させることで溶接を可能にしています。
アーク溶接は広く用いられていることから、溶接と聞くとアーク溶接をイメージする人も多いでしょう。アーク溶接では、溶接機の電極棒が、溶けるか溶けないかで分類されます。
溶融電極式では、溶ける溶接棒を電極として使うことで、溶接棒がそもそもの素材と接合するための溶加材の役目を果たします。
溶加材を自動的に供給できるものは、半自動溶接と呼ばれます。ほかにも被覆材を塗った溶接棒を電極にする被覆アーク溶接も用いられることがあります。
被覆アーク溶接は比較的コストが低いメリットがありますが、手動であることから手間がかかるデメリットがあります。
溶接ワイヤー
半自動溶接や自動溶接では、溶接ワイヤーが用いられるため、アーク溶接では、電極が不可欠です。
溶接ワイヤーは、コイル状でできたもので、溶接するものの素材や状態によって、どの溶接ワイヤーを用いるかを判断する必要があります。
多くの場合では、ソリッドワイヤーまたはフラックス入りワイヤーのどちらかが用いられています。
ソリッドワイヤー
ソリッドワイヤーは、同じ素材で作られたワイヤーです。銅メッキ加工されたものもあり、日本では金物など溶接が必要となる現場で広く用いられているワイヤーでしょう。
ソリッドワイヤーは、被覆アーク溶接棒と比べると効率が高く、自動化を簡単にさせやすい特徴があります。また、ロボット溶接でも用いられることがあります。
広く溶接姿勢の範囲を取れるため、溶接の場面が限定されないことがメリットです。また、フラックス入りワイヤーと比べると、コストを抑えることもできます。
さらにスラグが作られにくいという特徴があります。
ソリッドワイヤーは、アルミやステンレスを溶接するためのミグ溶接に用いられる場合が多いです。
フラックス入りワイヤー
フラックス入りワイヤーは、フラックスが内側に包まれているワイヤーのことです。
フラックス入りワイヤーには、ガスシールドアーク溶接用、セルフシールドアーク溶接用、サブマージアーク溶接用など種類があります。ただし、広く用いられているのは、ガスシールドアーク溶接用のフラックス入りワイヤーです。
ワイヤーによって、フラックスに含まれるものや配合比が違い、またそれぞれの断面の形も異なります。
圧接
圧接の分類のなかには、抵抗溶接があり、抵抗溶接は、融接と溶接の方法が違います。
圧接は金物を重ねて電極で挟み、電流を流すことで、熱を生じさせます。この熱と圧力によって、金物などを接合させるのです。また、固まった溶接部はナゲットと言われています。
抵抗溶接では、比較的作業が簡単であることから、機械化を図ることが容易であり、大量生産を可能にする方法です。またコストを抑えられることもメリットの一つです。しかし、融接と違い、溶接部を確認できないことがデメリットでもあります。
ろう接
ろう接は、古い溶接方法です。奈良の大仏に使われたことから考えても、その歴史を知ることができます。ろう接は、はんだ付けと似ていますが、ろう接に使われる金物は450℃以上であることに対し、はんだ付けは450℃以下であり、溶加材の融点の違いがあります。
ろう接は、はんだ付けより融点が高いことで、強度を高く保つことができるのです。
ただし、電子機器などの配線の場合には、融点が低いはんだ付けが用いられる場合が多いです。
またろう接は、バーナーで溶かした溶加材で、金物などを接合させます。異なる素材のものや異なる厚みのものであっても、接合できることが大きなメリットです。
まとめ
一言に溶接と言ってもさまざまな種類があり、その種類は細分化すると60種類にもなると言われていることを説明しました。古くは奈良の大仏が建築されたときから使われていた溶接の方法もあります。
溶接の方法は、溶接する金物の種類や素材、状態や環境など必要に応じて、方法を変える必要があります。熟練した技術を必要とするものもありますが、比較的簡単に行うことができる溶接もあります。
比較的簡単に行うことができる溶接では、機械化や大量生産に使われることも少なくありません。
しかし、一つ一つを手作業で行う溶接もあります。用途や形状に合わせて行う溶接では、熟練した技術や経験、知識を必要とします。
また、溶接の方法を選ぶときには、金物だけを溶接するものや、ほかの素材や金具同士を溶接できるもの、溶接する素材を問わないものなど、何を接合したいかによって方法が異なる場合が多いです。